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「時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース」 [ザ・シネマHD]


時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース! デジタル・リマスター [DVD]

時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース! デジタル・リマスター [DVD]

  • 出版社/メーカー: IMAGICA
  • 発売日: 2006/04/28
  • メディア: DVD




時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!<デラックス版> [DVD]

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!<デラックス版> [DVD]

  • 出版社/メーカー: エスピーオー
  • 発売日: 2004/06/04
  • メディア: DVD


天使カシエルは友人のダミエルが人間になって下界に下った後、ひとりで毎日ぼんやりと東西統一後のベルリンの街を見下ろしていた。やがてカシエルは、自分もダミエルと同じように人間になりたいと思い始める。
そんなある日、カシエルはアパートのバルコニーから誤って転落した少女を助けたことで、望みがかない人間になった。
しかし、カシエルはやがて人間界の様々な悪徳を知り、苦悩するようになる。そして、堕天使エミットに誘惑され、商社社長のヤクザまがいの悪行に手を染めるようになってしまう。
カシエルは社長が裏では悪名高き武器商人であると知り、彼とエミットの企みを阻止しようと、ルー・リードやピーター・フォークの協力を仰ぐのだが、阻止することができなかったばかりか、エミットが予言した通り、最期の時が近づいてくる…。

世界サブカルチャー史 欲望の系譜の90年代を観ていたとき、
この作品の存在を知った。
「ベルリン・天使の詩」は昔観たのだが、
そのあとの物語があることを知らなかった。
しかし世界サブカルチャー史で照会されていたのは、
東西ドイツ統一後の世界は、
決して明るく楽しいものではなかったと言うこと。
「ベルリン・天使の詩」が人間になったことで、
天使では得られなかった悦びを得た物語としたら、
「時の翼に乗って ファラウェイ・そー・クロース」は、
人間になったことで知らなくても良い悪事を知り、
知る必要もなかった絶望も知る物語だ。
まさにメインカルチャーに対するカウンターカルチャー、サブカルチャーの位置づけ。
例えそれが現実であったとしても、
人の心の声を聞き続けてきたけれど、
現実の人間は他人の心の声などどこ吹く風、
知れば知るほど下界は憧れた世界とはほど遠い。
それでも彼は生きなければならない。

元天使だった人間たちの魅力的なこと、
それは彼らが人間と共生し、
いくらかではあっても、
その欠点も欠陥も受け入れたからだ。
だから彼らは人間らしく、
それはもうたまらなくチャーミングなのだ。
そして堕天使エミットもまた人間の弱さを知っているからこそ、
堕天使であり魅力的ある。
カシエルはやがてその企みに巻き込まれて、
最後は人間になって失った翼、
その翼によって羽ばたいていく。
何とも皮肉に満ちた物語ではあるが、
その姿が象徴するものは明らかであり、
飛散ではあるが美しくもある。

確かにこの物語は哀しい。
しかし絶望だけではない。
人間にもまだ希望があることを見せてくれる。
果てしなく暴走する人間の欲望ではあるが、
まだそこから救われる心を感じさせてくれる。

ヴィム・ヴェンダースを特に好むわけではないが、
「ベルリン・天使の詩」だけがクローズアップされて、
こちらが陰に隠れてしまうのは、
それこそサブカルチャーたる由縁であり運命なのか。
しかしメインとサブは必ず表裏一体であり、
同時に存在して同時に作用反作用とするものなのだ。

だからこそこの作品を観なければならない。
人間の世界の真実を知らなければならない。

「ベルリン・天使の詩」を見た時は若かった。
きっと見えないものがいくつもあったと思う。
また近いうちにそちらも見直そう。
世界が分断されていた時代を観てみよう。

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