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「夜明けのすべて」 [映画]



月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。

予告はシネコンで見ていたけれど、
特に心惹かれるところもなく、
渋川清彦と光石研は気になったけど、
ま、WOWOWで良いか、と。
でもね。
シネコヤで上映時間を待っていたら、
例の可愛い従業員のお嬢さんが来て、
この映画をオススメされまして。
「全編フィルムで撮影されていて、 
 それがここの雰囲気ととってもあっていて、
 とても良い映画なのでぜひ。」
いや、もう、この子にそう言われたらねぇw。 
実に見事に私の泣き所というか、
ツボを押さえているんだものw。

三宅唱監督の名前、
これがオープニングで気になったけれど、
思い出せないまま本編へ。
もう、なんというか、
自分ではどうにもできない感じとか、
イライラするし自分が情けないし、
一歩が出ない自分が嫌いになる感じ、
藤沢さんと山添くん、
2人のつらさがどちらもわかるだけに、
2人の気持ちが寄り添い始めるまで、
本当に辛くて辛くて辛くて。
だけど時折見せる藤沢さんの優しさとおせっかい、
それにどうしようもなく癒される。
それに徐々に心開き始めて、
自分が無理していたことと、
自分がいるべき場所に気づき始める山添くんの、
その心の微妙な動き方がとても心地良い。
周りで働く人たちも、
弟を自死で失った社長も、
みんなそれぞれに事情を抱えながら、
それを明らかにすることはないけれど、
決してみんな無難で無傷の人生ではなさそう。
その人たちの温かさと優しさ、
それが藤沢さんと山添くんにじわりじわりと、
固まった心と冷え切った魂を溶かして、
みんなが溶け合って仕事をしている毎日になる。
その変化と優しくなる風景が染みて沁みて、
自分もまた優しい気持ちになれて、
思わず笑顔になることができて、
最後には本当に満ち足りた気分で席を立てた。 
更にその気分の良さは寝るときから目覚めるまで、
ずっと持続した。
こんなにもセロトニン、オキシトシンを分泌させる映画、
他にはないんじゃないかと思うくらいに。

全くノーマークだっただけに、
オススメしてくれた可愛い彼女には大感謝。
三宅唱監督って「ケイコ 目を澄ませて」の監督。
ああ、なるほど。
あの映画も16mmフィルムだったし、
フィルムならではの持ち味と温かさ、
それを表現できる監督なのかもしれない。
だとしたら、
これから先も大注目だ。

美しい物語とか、
きれいごととかではない。
でも何処かで人間の優しさとか誠意を信じて、
前を向いて人を信じて歩いて行ける。
そういう気持ちにさせてもらえる。
そんな映画だったし、
実際人生は悪いものじゃないと心底思えた。



同じ上映を見たお客様の中に、
友達と会話しながら、
「オオカミの家って映画がすごく良かったの」
と口にした人と思わず意気投合して、
ついでに「ボーはおそれている」に彼らの作品が使われていることや、
「オオカミの家」が円盤になっていることなど話してしまった。
類は友を呼ぶというか、
そういう場所だというのか、
いずれにしても出会いの場ではある。

実に満ち足りた日になった。



夜明けは1日の中で一番くらい。
だから私は夜明けの写真を撮りたい。
できるだけタイミングが合えば、
美しい太陽を撮りたいと思っている。
そんな気持ちともシンクロした。

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