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「原因へのこだわり」からの解放。 [うつ病関連]

「今度こそ『うつ』から抜け出す本」に、
「普段はうつ状態のことを忘れて生きる、が、一つの理想型である。
 これは、うつ状態になったと本人が思っている原因からの解放でもある。」
そう記述してある。

今度こそ、「うつ」から脱け出す本

今度こそ、「うつ」から脱け出す本

  • 作者: 下園壮太
  • 出版社/メーカー: 大和出版
  • 発売日: 2010/09/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



私の「原因へのこだわり」はわかっている。
それは、
私が3人の女性を殺したことだ。

一人目は母方の祖母。
私が産まれるちょうど二ヶ月前に脳卒中でなくなった。
妊娠8ヶ月の母が、
自分の母親が脳卒中で倒れ、
更に亡くなり、
そして通夜、葬儀と慌ただしく真夏に過ごしていて、
早産も死産もなく無事に産まれた私は、
祖母の命を食い物にしたのだとしか思えなかった。
小さなころは気にしなかったが、
育つにつれていろいろなことを考えるにつれて、
「私が産まれるために祖母を殺した。」と思うようになった。

二人目は母親。
身体が不自由になって8年余り、
長患いの面倒を家で見ていた私は、
頑固で気が強くて人の言うことなど絶対にきかない母に逆らえず、
「入院したくない、あそこの病院はいやだ」
そういう母親の言うなりになっていた。
その結果、正常な判断力を失った母親を見殺しにした。
最終的にケースワーカーさんの計らいで入院したけれど、
そのときには母の命運はつきていたのだと思う。
入院先で心筋梗塞を起こした母のそばで、
何分心臓マッサージをしても戻らない母を見ながら、
「このままでは脳死だ。
 その状態で生き続けるのは勘弁してくれ。
 もうこれ以上私たちをくるしめないでくれ。
 御願いだから終わりにしてくれ。」
残酷にも母の死を願っていた。
そうして母は死んだ。
この思いはそのときから私を解放したことがない。
ずっとずっと母親の「死を願った自分」を忘れたことがない。

三人目は母の妹、叔母だ。
その死の経緯はここにも書いた。
私が子宮腺筋症の手術で入院していたとき、
見舞いに来てくれたのが最後の元気な姿だった。
叔母自身仕事で忙しくしていた中、
「死ぬような病気じゃないから」と何度も遠慮して、
それでも来てくれた。
退院して少し体力が回復してきたころ、
別の叔母から一報が入った。
私が退院した翌日、
叔母はくも膜下出血で倒れて意識不明だった。
叔母は横浜市に住んでいたが、
偶々仕事先で具合が悪くなったために、
同じ藤沢市内の個人病院に入院していた。
そして再手術の最中に出血を起こして脳死状態だった。
もうすでにそのとき私は自分を呪った。
「命に関わらない病気の私が、
 地域で一番レベルの高い病院で治療を受けられて、
 命に関わる症状の叔母が、
 なぜ一個人病院で治療を受けなければならないのか。」
その皮肉を呪っていた。
そして叔母が亡くなると私は思った。
「私はもしかしたら死ぬべきだったのかも知れない。
 手術中に麻酔事故か何かで死ぬ運命だったのだろう。
 だけどまたしても私の悪運が叔母に乗り移ってしまった。
 だから叔母は死んでしまった。
 叔母を殺したのは自分。
 叔母の家族をあんなにも悲しませたのは自分。」
そして、その思いが私をうつ病へ走らせた。

健常者の思考からすれば、
私の思考が異常なことはわかっている。
私だって365日四六時中こんなことばかり考えてはいない。
それでも何かきっかけがあれば、
「殺人者」である自分を思い出すのである。
自ら手を下すのならば法の裁きも下る。
けれど私は何処か無意識に人を殺すことができるのだ。
それも自分の命を守るために。
私の脳の片隅にこの思いが巣くっているのだ。

今回は母親が亡くなったのと同じ年齢になることで、
この原因へのこだわりが復活したのだ。
そしてここ2年ばかりは社会復帰への必死さが勝っていて、
それすら思い出す余裕がなかったのだ。
今はむしろ原因へのこだわりを思い出す余裕があるのかも知れない。
11月は叔母の命日がある。

「原因探しはほどほどにして、
 今の状態を少しでも楽にする方策を探していくほうが、
 ずっと建設的だ。」

本にはそう書いてある。
そう、わかっている。
死んだ人は戻らない。
私がそう思っているだけで、
私が生きながらえていることと関係はないかも知れない。
だからこのことは考えないのが良いに決まっているのだ。





でもうつ病という精神病を患っていることで、
世間からは「困った人」になっているのかと思うと、
いっそ消えることで、
みんな祝杯を挙げるのではないかという気持ちも消えない。
これも被害妄想という症状の一つだとわかってはいるが。

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