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「福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇」 [電子書籍]


福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇

福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇

  • 作者: 辻野 弥生
  • 出版社/メーカー: 五月書房新社
  • 発売日: 2023/07/25
  • メディア: Kindle版


四国から千葉へやってきた行商人達が朝鮮人と疑いをかけられ、正義を掲げる自警団によって幼児、妊婦を含む9名が惨殺された。
映画『福田村事件』(森達也監修)が依拠した史科書籍。長きに渡るタブー事件を掘り起こした名著。【森達也監督の特別寄稿付き】
「辻野さん、ぜひ調べてください。......地元の人間には書けないから」
その時から、歴史好きの平凡な主婦の挑戦が始まった。
「アンタ、何を言い出すんだ!」と怒鳴られつつ取材と調査を進め、2013年に旧著『福田村事件』を地方出版社から上梓したものの、版元の廃業で本は絶版に。
しかし数年後、ひとりの編集者が「復刊しませんか?」と声をかけてきた。
さらに数年後、とある監督が「映画にしたいのです」と申し入れてきた──。
福田村・田中村事件についてのまとまった唯一の書籍が関東大震災100年の今年2023年、増補改訂版として満を持して刊行!

映画「福田村事件」は厳密に言えばフィクションである。
現実に起こった事件をモデルにはしているが、
歴史の狭間に埋もれた事件であり、
モデルになった行商団もいるし、
村民の記録もあるけれど、
それ以上に想像で補われた部分、
或いは創造された部分やキャラクターの存在は明らか。

ならば本当の福田村事件とは?

出版社の廃業により、
絶版となっていた本書が復刊された。
だから幸運にも我々は読むことができる。
丹念に集めた当時の事件や裁判を報道する記事も。
だからいくら「政府内に記録がない」と官房長官が言おうと、
それぞれの自治体や新聞には記録が残っているのだ。
内務省が不逞鮮人によって井戸に毒が投げ入れられた、
そこかしこで火付けを行っている、
テロ行為を行っているという通達を出し、
戒厳令によって帝都を軍の統治下に置き、
警察によって主義者たちの虐殺行為を行い、
その後は警察は黙認状態で(当時の警視庁官房主事は正力松太郎!)、
日本人、朝鮮人、中国人が多く言われなく殺された。

福田村事件は今の千葉県野田市。
そこに折悪しく行き会わせた香川からの行商団。
折悪しく関東大震災が起こり、
内務省の通達、噂話、不確かな情報、
それが村の人たちの不安をあおり立てる。
聴いたこともない放言を喋る一団を、
無抵抗な子どもや妊婦まで含めて殺害。
事件は決して闇に葬られたわけではなく、
実行犯たちは裁判にかけられた。
しかしその抗弁は、
「国を憂えて」と言いながら、
さも国を村を守るために立ち上がったかのような。

行商団が被差別部落出身者であること、
このことも事件の存在を隠してしまった。
通常ならば家族や自治体によって抗議され、
事件は明らかにされて補償問題にもなるだろう。
そして香川県と千葉県の距離。
これもまた調査や抗議の妨げとなった。

そうして公になること時間は過ぎていく。

いくら時の政府や首長が認めなくても、
こうした丹念な調査によって、
多くの虐殺行為があったことが明らかになっている。
記憶は差だけではないが、
教科書にはなくても授業で話を聴いたような気もする。
なにより無事に香川に帰り着いた一行の生き残り、
この人の証言が物語る身の毛もよだつ狂気。

ただ。
恐怖や不安をあおり立てる噂話、
それによって誰もが凶器を手に取る可能性があるし、
逆にその犠牲になる可能性がある。
そのことだけは忘れてはならない。
戦争もパニックも同じ。
正義がどこにあるかはまだら模様になる。
現代でも同じこと。
SNSの言葉に踊らされ、
或いはワイドショーの放送に煽られ、
時と場合によっては、
早まった情報で舞い上がる首長の会見に踊らされ、
人はあちらこちらへと揺れ動く。



真実はそこにある。
でも真相は必ずしも記録されない。
それは今も同じ。

もう一度。
「政府に記録はない」。
真相は必ずしも記録されない。
いや、記録はないと言われてしまうことでなかったことになる。



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