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「犬神家の一族」 [TV]



後編の最後の最後で、
吉岡秀隆を金田一にキャスティングした理由がわかった。
この脚本では見た目に反して怜悧な頭脳を持つ、
有名な探偵を演じる必要はない。
むしろ自分の中に事件を取り込んで、
そしてなお理解をしたいと思う金田一、
自らが暴いた真相に隠れたものを知りたいと思う金田一、
その金田一を演じるにふさわしい役者が必要だった。
それは市川崑と石坂浩二が作り上げた金田一ではなく、
その後も数多の役者が演じてきたどの金田一でもなく、
吉岡秀隆が演じる金田一である必要性があった。
余談だが中尾彬演じる金田一などもってのほかだ。

そしてがっぷり四つに組む大竹しのぶ。
もう鬼気迫る演技でございました。
竹子、梅子とは格が違いすぎて、
その凄まじさはもうもう言葉が出ません。

そして最後の絡繰り。
それは果たして金田一の考えたとおりなのか。
だとしたらなんという呪われた恐ろしい一族の血。
今まで固定されて来たかのようなこの物語に、
更に一つ重いくびきを与えた。
苦悩する金田一の姿が物語る、
他の誰も考えなかった真相の重さ。

あのシーンがなかったら、
このドラマは今までの「犬神家の一族」と比較しても、
何一つ変わらない平凡なドラマだっただろう。

あのシーンを謎解き後に見せたとき、
「あれ?」と思ったのは正しかった。
クライマックスはそこでもなかったし。



苦悩する金田一の姿。
これこそ新しい金田一としてふさわしい。

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アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』 2021年8月 (NHK100分de名著) [TV]


アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』 2021年8月 (NHK100分de名著)

アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』 2021年8月 (NHK100分de名著)

  • 作者: 沼野 恭子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2021/07/26
  • メディア: ムック


プロパガンダに煽られ、前線で銃を抱えながら、震え、恋をし、歌う乙女たち。戦後もなおトラウマや差別に苦しめられつつ、自らの体験を語るソ連従軍女性たちの証言は、凄惨でありながら、圧倒的な身体性をともなって生を希求する。そうした声に寄り添い「生きている文学」として昇華させた本作をはじめ、アレクシエーヴィチの一連の作品は「現代の苦しみと勇気に捧げられた記念碑」と高く評価され、ノンフィクション作家として初のノーベル文学賞を受賞した。原発事故、差別や自由、民主主義等、現代世界に投げかけられた問いを提起し続けるアレクシエーヴィチの文学的価値について、彼女とも親交の深いロシア文学研究者の沼野恭子氏が解説する。

一挙放送をしていたので、
今だからこそ観ておこうと。

「ロシアン・スナイパー」という映画を観た時に、
始めてソビエトでは兵士も男女平等だったことを知る。
しかしいくら男女平等とは言っても、
身体的能力や特徴は同じであるはずもなく、
女が戦場で同志として戦って役に立ち、
かつ弱い部分では守ってもらうためにどう生きるか、
その事実がとんでもなく残酷なものに思えた。
それは現実であり本当だった。

しかしそれにもまして、
共産主義でありスターリン政権下のソビエトでは、
旧弊たる価値観と都合の良い共産主義が共存し、
それが故に男性も女性も兵士たちは苦しむ。
「ソビエトには捕虜はいない」として、
捕虜として釈放された兵士は収容所に送られ、
村へ帰った女たちはあばずれと辱められる。
その一方で彼女たちが語る物語と、
表に出してもらいたい物語の相違。
プロパガンダに洗脳された人たちは、
それすら無意識に語っていく。

それにしても言葉数は多くないが、
時折挟み込まれる伊集院さんの言葉は、
常にこちらの心に何かを波立たせる。
この人の言葉に対する独特の感覚は、
やはり卓越などと言う平凡な言葉では言い表せない。

「証言文学」というジャンルは、
実は恐ろしくて手にできないでいた。
しかし今回の放送で語られる、
著者の言葉を聴いていて思った。
「こう言う思いで聴いたのなら、 
 それを理解して書き残したのなら、 
 つらく厳しい読書ではあるが読んでみたい。」

まだ覚悟はできていないけれど。

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「ムショぼけ」 [TV]


ムショぼけとは…
長年の刑務所暮らしによって、社会と閉鎖された生活を送った者が出所後、世の中の環境の変化やスピードの速さについていけない現象。このドラマの主人公は、そんなムショぼけ状態にある元ヤクザの男です。
作品の舞台は人情の下町・尼崎!
撮影は今年6月にオール関西ロケを実施!関西人には馴染みスポットがたくさん登場します。
手掛けるのは…映画監督・藤井道人!
映画「新聞記者」で日本アカデミー賞作品賞を受賞後「ヤクザと家族The Family」など 数々の話題作で脚光を浴びる若手映画監督・藤井道人が企画プロデュース!

我らが北村有起哉主演ドラマ!
チャンネルNECOで一挙放送。
飛びつきましたわ。

想像以上にエモいドラマで、
今まで観たことがないような北村有起哉、
チャーミングな登場人物、
如何にもな存在感の板尾創路、
めちゃくちゃ面白くて、
最後はもう涙ボロボロでした。

なんだかんだ言って、
極道でも家族が大事、
家族の愛があってこその更正。
14年の獄中生活で、
いろんなものを失って、
組からも破門されて約束は反故、
堅気として生きるよりない出所後の生活。
娑婆に馴染むために悪戦苦闘、
我慢すべきは我慢して頑張る。
元舎弟になぜか現役人気モデル。
娘に息子にオカン。
その温かさはとても良い距離感。

どちらかと言えば、
冷静で知的な役柄の多かった北村有起哉、
ここで一気にはじけて、
ユーモラスで娑婆で生きるために必死な男を熱演。
楽しいっす。
最高っす。

30分のコンパクトなドラマだからこそ、
テンポ良く良い感じの無駄がない構成。
だけど情感を表現するときは、
たっぷりと時間と空間を使う。
チープなところもあるけれど、
そんなことは何処かへ吹っ飛ぶ。

北村有起哉、やっぱりすげぇ。

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「紅の豚」 [TV]


紅の豚 [Blu-ray]

紅の豚 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
  • 発売日: 2013/07/17
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
1920年代末のアドリア海は、ファシズムの足音と新たな戦争の予感におびえていた。それは決して「古き良き時代」などではなかった。食い詰めた飛行機乗り達は空賊となって暴れまわり、彼らを相手に賞金稼ぎたちは功を競った。その中に、賞金稼ぎとして最も名を上げていた一匹の豚、ポルコ・ロッソ(紅の豚)がいた。イタリア空軍のエース・パイロットだった彼は、自らに魔法をかけて豚の姿になってしまったのだ。ポルコをとりまく女性たち、手に汗握る空賊との戦い、アメリカからやってきた宿命のライバル、そして全編を彩る空を飛ぶロマン。誇りと金と女のために、命を賭けた戦いが今幕を開ける。

なにせジブリを避けてきた映画人生なもので。
ノーカット放送だし、
観るときは編集してCM抜けば良いかって。

面白い。
うん、面白い。
良くできている。

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「殺人の追憶」 [TV]


殺人の追憶 【4Kニューマスター版】 [Blu-ray]

殺人の追憶 【4Kニューマスター版】 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2020/07/22
  • メディア: Blu-ray


【あらすじ】
1986年、ソウル近郊の農村で若い女性の変死体が発見された。
その後も同じ手口の連続殺人事件が発生。
現地には特別捜査本部が設置され、地元の刑事パク・トゥマン(ソン・ガンホ)とソウル市警から派遣されたソ・テユン(キム・サンギョン)がこの難事件に挑む。
性格も捜査方法も対称的な二人は衝突しながらも、ついに有力な容疑者を捕らえるのだが…。

BS12で放送していたので、
軽い気持ちで見始めたら最後までやっぱり見ちゃった。

もう何回見ただろう。
何度観ても飽きないし、
何度観ても戦慄するし、
何度観てもソン・ガンホの最後の表情に引き込まれる。

もしかしたら「パラサイト」より好きかも。
「パラサイト」を観てポン・ジュノに興味を持ったら、
絶対にこの作品は観て欲しい。
そのくらい面白いしコワイし最高。

本当に何度でも観られる。

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「大統領候補が消えた!〜金大中拉致 “スパイ”たちの攻防〜」 [TV]

1973年8月8日、東京・九段下のホテルから、突如、韓国の大統領候補がさらわれた!煙のように消えたのは、のちにノーベル平和賞を受賞するキム・デジュン。やがて犯行は、韓国の情報機関KCIAの仕業と判明する!彼らは何を狙ったのか?事件をどう決着させるのか?日韓の外交問題が勃発する中、“スパイ活動”に従事した当事者が初めてのロングインタビューに応じた。謎めいた攻防戦の舞台裏を明かすアナザーストーリー!

「KCIA 南山の部長たち」たちを観て以来、
あの当時燻っていた韓国の独裁政権と、
日本とのきな臭い関係に興味が強くなった。
何しろ当時私は子供だったし、
そう言うことを教えてくれるような家庭ではなかった。
お恥ずかしい話だが、
私の母親は韓国人や中国人を日本人よりしたと見なしていた。
昭和12年生まれで敗戦を経験して、
満州から引き上げてきた彼女の世代には珍しくなかっただろうが。

しかし多くの事件は闇の中
当時の両国の関係もあったし、
韓国の政治情勢もあった。

金大中拉致事件に関しても、
このドキュメンタリーの表面上のことは理解していた。
しかしその裏で動いていた人間に、
日本側の諜報関係がいたり、
韓国側のマスコミの話は驚くものだった。
そして韓国自身による事件の総括。
その調査過程に日本政府からの干渉。
金大中による報告書の否定。

戦前から続く因縁があり、
かつ韓国が独裁政権にあったからこそ、
この事件の闇は深くなったのだ。
そして今もまだ藪の中。

歴史は都合の悪い事実を隠蔽する。
そしてその真実はいくつもの推測を生み出す。
この事件も関係者がそれぞれに語り、
それぞれが否定し、
それぞれが沈黙する。

時にこうしたドキュメンタリーは、
映画の脚本を超えている。
「事実は小説よりも奇なり」
朴正煕大統領暗殺事件同様、
事実なんてものはただの事象。
その裏にある人間の心の方が恐ろしい。



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『シャーロック・ホームズの冒険』放送決定! [TV]

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海外ドラマ 名作ミステリー『シャーロック・ホームズの冒険』放送決定!

購入するとなると高いのが、
NHKエンタープライズの製品。

なので再放送を待っていました。
これをBlu-rayに焼いてコレクションの一つにしようと。

ポワロはずっと放送されているし、
途中まではDVDボックスセットで所有済み。
今もレコーダーがキーワードで勝手に録画しているしw。

数多あるシャーロック・ホームズの中でも、
このグラナダTVのシリーズは別格。
非常に原作に忠実だし、
ホームズのイメージもピッタリ。
ジェレミー・ブレッド最高。

と言うことで、
また長いお付き合いが始まりますw。



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「アルカトラズからの脱出」 [TV]


アルカトラズからの脱出 [Blu-ray]

アルカトラズからの脱出 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: Blu-ray


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
クリント・イーストウッド主演による実話を元にしたサスペンスドラマをBD化。絶対に脱獄不可能と言われたアルカトラズ連邦刑務所に入獄させられたフランク・モーリス。ほかの刑務所で何度も脱獄を企てていた彼は、ここもなんとか抜け出そうと画策する。

入所した瞬間から、
生きる目的は「脱獄」。
百戦錬磨のフランクは監獄の弱点を見抜き、
すぐに脱獄のための地道な作業に着手する。
アメリカの監獄ものらしく、
必要になった道具は仲間が調達してくれる。
使えそうな道具は自分達でも調達。
余り期待しないで見始めたけれど、
これがなかなかどうして面白い。
イーストウッドの作品選びってヤツは、
本当に抜け目がない。

脱獄も決して派手ではないし、
そこに至る作業も極めて地味。
パトリック・マッグハーン演じるいやらしい所長も、
割りと出演シーン少なくて案外地味。
なのに面白くて見入ってしまうのは、
これこそ緩急、ハラハラドキドキ、
或いは人道的にどうよ、見たいなエピソードとか、
その辺の脚本と編集と演出の妙なんだろうな。

派手なドンパチもないし、
脱獄劇もかなり地味だし、
もしかしたら期待外れという人もいるだろうけど、
このイーストウッドとドン・シーゲルのコンビも、
見事に成功していると思う。

あくまでも個人的好みだけど、
このあっさり感がけっこう好き。


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「ピンポン」 [TV]


ピンポン Blu-ray スペシャル・エディション

ピンポン Blu-ray スペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2012/09/05
  • メディア: Blu-ray


商品の説明
内容紹介
松本大洋による原作のスピリットと高揚感を、監督曽利文彦、脚本宮藤官九郎が完全映画化!
2002年7月20日公開
この星の1等賞になる!! 胸を熱くさせる究極の青春映画
才能にあふれ、卓球が好きで好きでたまらないペコ。子供の頃から無愛想で笑わないスマイルにとってペコはヒーローそのもの。
だが、ペコは上海から来たエリート留学生チャイナに完敗。続くインターハイでは、もう一人の幼なじみアクマにも敗れてしまう。
一方スマイルは、コーチに才能を見い出され、メキメキと実力をつけていく。立ちはだかるのは全国の覇者ドラゴン。
現実の壁にぶつかったペコと強さに目覚めたスマイル。それぞれの道を歩き始めた彼らに、またインターハイの季節がやってきた…。

NHKのBSでやっていて、
「あ、そういえば観ていなかった!」と。

原作を読んでいないの出比較はできないけど、
それなりの長さがあるマンガの中から、
2時間の映画にするというのはけっこうな技で、
小説も同様に「切り取る」という作業と、
残すべきコアになる部分の選択肢と、
それを紡ぐ作業である脚本がダメだと、
せっかくの原作の良さが死んでしまうので、
監督だけじゃなく脚本がものを言うと思っている。

と思ったらクドカンじゃーんw。

ユーモアと緊張感のバランス、
群像劇でありながら、
全員がちゃんと印象に残るバランス、
イヤミにならない強烈さ、
何ともいえない感覚。

歳を取ったから余計に、
こう言う青春ものがまぶしくて、
楽しくて爽快。
窪塚洋介も良い味わいで、
このエキセントリックな感覚は、
クドカンにマッチしたなぁと。
こう言う映画をたまに観ると、
ちょっと胸アツで良いなぁって思っちゃう。

最後の染谷将太、
可愛かったなぁw。

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「羊たちの沈黙」BSプレミアム放送版 [TV]


羊たちの沈黙 [Blu-ray]

羊たちの沈黙 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2014/02/05
  • メディア: Blu-ray



もはやクラシックの名作とも言える、
そしてアカデミー賞受賞作に衝撃をもたらした、
この途轍もない作品を今一度TV放送で。

何と、この放送の字幕が素晴らしかった。
メディアの翻訳よりもずっと原語に近い。
非常にストーリーもわかりやすく、
かつちょっと洒落た言い回しや、
含みのある台詞も理解しやすいのだ。
まさかTV放送時に翻訳が変わっているとは思わず、
すっかり侮っていたのでビックリ。

で、概ね良い字幕なのだが、
最後の「友人と夕食に」は、
もとの「古い友人を夕食に」の方が良かった。

種市譲二という字幕翻訳家、
ちょっと覚えておこう。

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