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「増補版 ぐっとくる題名」 [電子書籍]


増補版 ぐっとくる題名 (中公文庫)

増補版 ぐっとくる題名 (中公文庫)

  • 作者: ブルボン小林
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: Kindle版


●第1章 ロジック篇 
【助詞の使い方】「ゲゲゲの鬼太郎」「無能の人」「僕が泣く」
【韻とリズム】「ヤング島耕作」「勝訴ストリップ」「噂の刑事トミーとマツ」
【言葉と言葉の距離(二物衝撃)】「天才えりちゃん金魚を食べた」「部屋とYシャツと私」
【題名自体が物語である】「脳手術の失敗」「お勢登場」「海へ出るつもりじゃなかった」
【濁音と意味不明な単語】「しだらでん」「少年アシベ」「ディグダグ」
【アルファベット混じりの題名】「D坂の殺人事件」「M色のS景」
【古めかしい言い方で】「ツァラトストラかく語りき」「されど孤にあらず」
【命令してみる】「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」「メシ喰うな」
【パロディの題名】「長めのいい部屋」「百年の誤読」
【関係性をいわない】「隠し砦の三悪人」「11人いる!」
●第2章 マインド篇 
【先入観から逸脱する】「淋しいのはお前だけじゃな」「サーキットの娘」
【日本語+カタカナの題名】「少年ケニヤ」「三人ガリデブ」
【いいかけでやめてみる】「光ってみえるもの、あれは」「飼い犬が手を噛むので」
【いいきってしまう】「これからはあるくのだ」「幸せではないが、もういい」
【長い題名】「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ」「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」
【題名同士が会話する】「今夜わかる」シリーズ「買ってみた。」「それが本当なら」
【洒落の題名】「屁で空中ウクライナ」「ザ・先生ション!」
【人気歌人に学ぶ】「どうして長嶋有さんは枡野浩一なんかとつきあってるの?」「日本ゴロン」「世界音痴」「にょっ記」

最近、ちょっとした「言葉」に引っかかる人が気になる。
そこからいろいろな方向に話を掘り下げて、
予想もつかない結論に結び付いたり、
あれこれと思索を巡らせるのも楽しい。
ブルボン小林という人の芥川賞作家ではなく、
そういうマニアックなこだわり部分がたまらない。

「題名」一つを取り上げて、
その言葉の選び方や言葉のかかり方、
受け取る側の印象の違いや、
「もしこういう題名だったら」という並び替え、
非常に高尚なお遊びである。
「三人ガリデブ」などは、
昔から奇妙な題名だと思っていたから、
「ほかに適切な訳語はなかったのか?」と思っていたり、
そうかと思えばいきなりぶち込まれる、
「どうして長嶋有さんは枡野浩一なんかとつきあってるの?」
これは衝撃的だし思わず笑ってしまう。
その本を読んでいただけに、
その当時のことを思い出してなお笑えてくる。
そうかと思えば、
自分の短編集の題名を取り上げて、
「なぜこの題名にしたのか」の経緯を記してくる。
振り返ってみたら、
短編集の題名=その短編集の代表作くらいに思っていて、
その題名が決まるまでの経緯なと考えたこともなかった。
実用書偏となるとその面白さはさらに深くなり、
文学とは違う視点で題名を決めていく。
その過程がもはや「わからなくなってきました」状態。
最終的にはそういう時に編集が冷静に判断を下すのだろうが、
作家という当事者は案外「題名」に客観的になれない。
「売れたい」「売りたい」「手に取ってもらいたい」
そんな欲が願望が渦巻きすぎてしまう。

通常本屋の棚で、
私たちが目にするのは背表紙の題名。
平積みの本ならば装丁とそこに含まれる題名。
何となく題名で気になったら手に取って、
あらすじらしきものを確認して購入するかしないか、
読むか読まないかを決定する。
そう考えたら出版物の「題名」というのは大した価値だが、
案外その瞬間に忘れられていたりもする。

その「題名」にぐっとくる。
MJがその心をとらえられた時も「ぐっとくる」と表現するが、
この「ぐっとくる」という言葉は秀逸な題名ではないか。
とりあえず端的に内容を表していてかつ魅力的。
この本を電子書籍で買って読んだんだから、
ともかくこの本の題名、
ブルボン小林の勝利である。

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「平家物語 犬王の巻」 [電子書籍]


平家物語 犬王の巻 (河出文庫)

平家物語 犬王の巻 (河出文庫)

  • 作者: 古川日出男
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: 文庫




平家物語 犬王の巻 (河出文庫)

平家物語 犬王の巻 (河出文庫)

  • 作者: 古川日出男
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: Kindle版


室町時代、京で世阿弥と人気を二分した能楽師・犬王。盲目の琵琶法師・友魚(ともな)と育まれた少年たちの友情は、新時代に最高のエンタメを作り出す! 「犬王」として湯浅政明監督により映画化。

なにぶんにも映画の脚本というのは、
小説の原作とは別物であることが多い。
だからこそ映画には「脚色」という技があり、
それを楽しむということができる。
本作の場合、
「ミュージカルアニメーション」という特徴があり、
文字の文学である小説では計り知れない表現がある。
それでは小説の何にインスパイアされて、
なにゆえあれほどのアニメーションが製作されたのか。
それを知りたくなるのも人間というものだと思う。

驚いた。 

文字が謡い、文字が躍っている。
現実には旋律も舞踊もそこにはないのに、
物語全体が謡い踊っているのだ。
もちろん先にインプットされた映画のイメージはある。
しかし脚本は多少なりとも端折られているし、
原作と表現が全く同じであるわけもなく、
或いは解釈もまた脚色もまた違うものである。
それでも文章に戦慄が流れて舞いが見えてくる。
それは面白いものでこちらの解釈もあり、
映画とはまた違うものとして脳内再生される。

歌曲と舞踊に乗って、
あっという間に読み終わった。 
あまりに面白すぎた。
映画は映画、小説は小説。
同じ物語を描いていながら、
違う世界が広がっていた。

表現として適切ではないかもしれないが、
映画と小説で2倍以上に楽しい経験ができる。
とんでもない世界を垣間見ることができる。

今度は「犬王」のCDでも聴きながら、
もう一度小説を読んでみようかと思っている。

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「マイクロスパイ・アンサンブル」 [電子書籍]


マイクロスパイ・アンサンブル (幻冬舎単行本)

マイクロスパイ・アンサンブル (幻冬舎単行本)

  • 作者: 伊坂幸太郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2022/04/27
  • メディア: Kindle版


どこかの誰かが、幸せでありますように。
失恋したばかりの社会人と、元いじめられっこのスパイ。
知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり……。
ふたりの仕事が交錯する現代版おとぎ話。
付き合っていた彼女に振られた社会人一年生、
どこにも居場所がないいじめられっ子、
いつも謝ってばかりの頼りない上司……。
でも、今、見えていることだけが世界の全てじゃない。
優しさと驚きに満ちたエンターテイメント小説!
猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」でしか手に入らなかった
連作短編がついに書籍化!

久しぶりの伊坂幸太郎。
本は買ってあるのだがどうにも読み進まない。
ハードカバーを持ち歩くのも面倒だけど、
小さな文字を帰宅した夜の部屋で追うのが面倒。

ということで、
今回は電子書籍で。
なんの前知識もなく読み始める。

比較的早い段階で「ああ、なるほど」と思う。
けれどそれで興ざめかと言えばそうではなくて、
それこそ伊坂幸太郎ならではの世界を期待させる。
そしていつの間にかさらっと読み通してしまった。
偶然が偶然に重なって幸運な偶然につながる。
そんな世界が連なっているのはとても心地いい。
こんな世の中だからこそ、
そんな世界のつながりがあってほしいと思える。
そして読後感はいつも通り、
さわやかな草原と青空に吹き抜ける清々しい風。
「伊坂幸太郎はこうじゃなくちゃ」
そう確信して読み終える。

こうなると手元にあるハードカバーも、
ちゃんとまた姿勢を正して読んでみようかと思う。
こういう幸福感が欲しくて読むのだから、
それが得られる快感を思い出したら、
なんだか頑張ってみようかと思ってしまう。

そういえば「マリアビートル」の映画化が、
そろそろ出来上がる頃合い。



9/1公開か。 
また楽しみが一つ増えた。

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「羆嵐」 [電子書籍]


羆嵐(新潮文庫)

羆嵐(新潮文庫)

  • 作者: 吉村昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: Kindle版


北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現! 日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音……。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。

赤江珠緒さんの愛読書であるw。
以前から読みたいと思っていたが、
なかなかほかの本に優先順位がついて後回しに。


あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた

あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた

  • 作者: ブルボン小林
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: Kindle版



この本を読んで俄然火がついて電子で買っておいて、
読み始めたら面白さに一気読み。

古い本だしドキュメンタリーなので、
野暮な筋立ての話は不要だろう。
何しろ圧倒されるのが、
事件が起こって村が大騒ぎになるまでは、
淡々とした筆致で事実(と推測される)を描写する。
村人が見に迫った危険のために避難し、
羆を仕留めようと動き出して実際に仕留めるまでは、
会話劇も交えて熱いストーリーとして描写される。
この退避も見事だが、
淡々として筆致がむしろ恐ろしくて引き込まれ、
やがて夢中になってい読んでいる。
吉村昭という人の本はいつもそうなのだが、
言葉に秘めた力強さと現実の恐怖みたいなものが、
文字からこちらの身体に染みてくるように感じる。
決して煽情的ではないが、
その言葉と文章は恐ろしいまでの力を持つ。

この本を読むまで少々勘違いしていたことがある。
羆は一夜にして村を壊滅させるかのごとき蛮行を働いたのかと思っていた。
それは全くの思い込みであった。
そしてむしろそうではなかったこと、
羆の生態を知ることでさらに恐怖が大きくなった。
そこに立ち向かった当時の人たちの恐怖は、
それとは比較にならぬものであったことは容易に想像できるが、
それでも活字から感じる恐怖は凄まじいものであった。

今も人と野生生物の争いは起こる。
それは人が自然破壊をして、
彼らの生存権を侵しているからだ。

北海道の開拓民たちは、
こんな思いをしながら今の豊饒な土地を作った。
そのことも覚えておきたいと思う。

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「次の角を曲がったら話そう」 [電子書籍]


次の角を曲がったら話そう ~伊集院光とらじおと自由律俳句の本~

次の角を曲がったら話そう ~伊集院光とらじおと自由律俳句の本~

  • 作者: 伊集院光
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/11/18
  • メディア: Kindle版


伊集院光とらじおと放哉と山頭火との傑作選
リスナーから番組に投稿された自由律俳句の中から約160句を厳選し、番組の出
演者である伊集院光氏、タレント柴田理恵氏らによる句の解説を織り交ぜながら紹 介し、自由律俳句の魅力をたっぷりと届けます。
TBSラジオの平日午前中に放送されている人気番組「伊集院光とらじおと」。この番 組の木曜限定の人気コーナー「伊集院光とらじおと放哉と山頭火と」では、番組リ スナーから投稿された、いわゆる自由律俳句をパーソナリティーの伊集院光さんと 木曜パートナーの柴田理恵さんが紹介しています。本書では、番組で紹介された俳 句の中から伊集院光氏と番組スタッフが厳選した傑作を番組発の句集として1冊にま とめます。俳句に対する伊集院さんや柴田さんの絶妙な解説や寸評を、まるで番組 を聴いているかのように楽しめます。なお、本書のタイトルは、番組リスナーの投 票によって選ばれた俳句です。

自由律俳句の選集に、
あれこれ言うのは野暮というもの。
いろいろな解釈ができるし、
番組での開設や寸評も楽しめるし、
何より読んだ時の気持ちによって、
いろんなとらえ方ができるという素晴らしい自由律俳句。

ということで、
自分が気になった句を3つほど。

「大人になるって寛容になること、
 老人になるって偏屈になること」

これはただいま実感中。
父親とか叔父とかが妙に偏屈に依怙地になっていて。


「病院帰りに喪服を買う」

実際に病院帰りにはやっていないけれど、
ふと気づいたら父親は80歳越え、
叔父叔母も後期高齢者。
去年慌てて喪服をメルカリで購入して、
四季のバリエーションをなんとなくそろえてみたところ。


「娘のライダーキックに耐えられなくなってきた」

これはこの句を詠んだ人「ハトコは育児中」さんに思いをはせて。
TBSリスナーならおなじみの「ハトコは授乳中」だったのが、
「ハトコは育児中」になったんだなぁって。
ちなみに現在はまた「ハトコは授乳中」に。
下のお子さんが産まれたのかなーなんて。


いいですよ。
しみじみすることもあれば、
ホッとすることもあれば、
何となくほろりとすることもある。

こういう本が一冊手元にあると、
その日開いたページを読んで、
自分のその日の気分がわかる気がする。

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「テスカトリポカ」 [電子書籍]


テスカトリポカ (角川書店単行本)

テスカトリポカ (角川書店単行本)

  • 作者: 佐藤 究
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: Kindle版


メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。

「ダ・ヴィンチ」の関口編集長が、
直木賞候補として推している言葉から、
「これは面白そうだ」と直感。
直木賞受賞の報を受けて「読もう」と。
いつものことだけど、
買っても読み始めるまでに時間があるのだが、
その後の進捗状況は本の内容次第。

で、この本はどうかと言えば。
仕事が閑だったので会社のPCで読んだのだが、
読み始めたら余りの面白さに没入。
(もちろん必要な仕事はしているのだが)
最初は「なぜメキシコから始まる?」
「なぜインドネシアに?」 
不思議な展開に引き込まれて、
日本での壮絶な家庭環境の親殺し。
やがてキーマンとなる日本人が登場し、
その糸がつながり始めて日本へと舞台が移る。
その日本の舞台が川崎。
かつて営業担当していた地域。
土地勘がありすぎて、
物語に出てくる地名や雰囲気、環境が手に取るようにわかる。
「ああ、あそこならそういう場所があっても不思議じゃない。」
大田区の一部も回っていたので、
もう恐ろしいほどに頭の中で、
小説の風景と描写が脳内再生される。
没入するのも当然だった。

スプラッター映画もホラー映画もびっくりするほど人が死ぬ。
それも簡単に。
それも陰惨に。
だけどそこで流される血にはさほどの意味がない。
モブの死。
だけどその殺し方が、
痛めつけ方が半端なく痛い。
読んでいて字面で痛いことがわかる。
背中を怖気が走る。
裏切りは許さない。
裏切ったものが悪い。
だから憐憫の情も後悔もためらいもない。
そして感情がわからずに育った少年は、
素直に自分を庇護してくれるものを慕う。
自らが持つ力と能力をそのために使う。
何のためかは考えない。
「父親」が言うことだから。
そして思いもかけないことがきっかけとなり、
少年は感情というものを覚え、
「父親」は裏切りを許すまいと動き、
運命は皮肉な交錯をし始める。

血生臭い話が嫌いな人にはお勧めできない。
とにかく人が死ぬ、殺される。
多分それだけで嫌になる人もいる作品だ。
しかし一度はまり込んだら抜け出せない。
勢いがついたら止まらない。
とんでもない小説である。
川崎や大田区に土地勘がある人なら、
なおさら面白がれる。
そんな犯罪が似合う土地だから。

日本にも外国人が増えた。
だからこんな犯罪が裏で動いていても不思議じゃない。
いやはや、すごい時代になったものだ。
こんな小説を生み出すだけの土壌がそろっているのだから。
とにかく作者に敬意を表し脱帽である。
すごい。
とにかくそれだけ。


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「新・壇蜜日記 人妻は嗜好品」 [電子書籍]


新・壇蜜日記 人妻は嗜好品 (文春e-Books)

新・壇蜜日記 人妻は嗜好品 (文春e-Books)

  • 作者: 壇蜜
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/03/15
  • メディア: Kindle版


巻頭に「新妻」がテーマの撮りおろし写真集を収録!
結婚なんてゴールではない。
新婚早々見舞われたコロナ禍の中、マスクを作り、サウナに通い、ペットを愛でる。
祖母、ナマケモノとの別れ、そして新しい出会い――。
未曾有の一年を彼女は夫、たくさんの動物たちとどう過ごしたのか。
ほろ苦くて甘い蜜、のリアルな日々。

結婚もしたし、
毎週ラジオで話も聴けているし、
そろそろ日記はいいかな、と思いつつ結局読んでしまう。
ネガティブな壇さんの魅力も強力だが、
人妻となり何か変わったのか知りたくなる。

何というか、
実際壇さんは変わったと思う。
日記の内容が明らかに変わったと思うのだ。
とにかくよく寝るのは相変わらずだし、
それをのちに悔いるのも変わらないのだが、
その生活の合間に垣間見える壇さんの心持が、
以前よりも底上げされたというか、
全体にポジティブ側に動いた気がするのだ。
そして意外なほどに清野さんのことも書いている。
もとより男とのことは隠していなかったが、
清野さんとの夫婦としての付き合いも隠さない。
それが微笑ましくてちょっとうらやましい。
そして動物たちへの愛情と、
ラジオの仕事への記述と愛情も増えた。
人妻となって何がどうしたのかは知らないが、
壇さんの心の中の水たまりが、
湿った暗い水たまりから、
日が差し込む明るい水たまりに変わったような気がする。
水たまりがなくなってしまったら壇さんではないので、
この水たまりがなくなることはないのだろうけれど、
もしかしたらこの先水の量が上下するのかもしれない。

いずれにしても最初からずっとお付き合いしてきて、
去年の日記はかなり違うと思われる。
ラジオでは相変わらずたまにネガティブで、
わけのわからない甘えを発揮するのだが、
それもまた「お仕事」の一部なのかもしれない。

壇さんはこの1年で本人が思っている以上に、
案外違うレベルに何かが到達していると思う。

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「50歳になりまして 」 [電子書籍]


50歳になりまして (文春e-book)

50歳になりまして (文春e-book)

  • 作者: 光浦 靖子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/05/29
  • メディア: Kindle版


40代になって仕事がゆる~りと減り始め、一大決心してレギュラー番組に休みをもらい、大好きな部屋を引き払って留学する予定だった2020年4月。しかし、緊急事態宣言が発出されて、留学を断念、家なき子の仕事なき子になってしまって……。
「東京に行けばすべてが叶う」と妄信して上京した18歳の時と同じような気持ちで決めた、50歳目前の新しい挑戦=留学。今年の夏にカナダ留学にリトライしよう、という新しい目標を決めて、留学するまでのことを23本のエッセイに。
40代最後の年の決意、コロナ禍に妹の家で過ごした居候生活、「イーーーーーーー!!!」となるくらい大好きな手芸のこと、更年期を迎えようとしている心と体の変化、なぜカナダだったのか、来年30周年のコンビのこと……。同世代にとって、そしてちょっと生き辛さを感じているさまざまな世代の人たちがクスっと笑えて、「あなたもですか」と共感しつつ元気をもらえるエッセイ集です。

「そうか」というのが一番の感想。
毎週木曜日に耳にしてきたやっちゃんは、
エキセントリックだけど女性としては共感もできて、
何となく大きな嵐もなく凪の中で、
マイペースに芸人として生きてきた印象。
もちろん去年留学しようとしていたことは知っていたけど、
コロナ禍で仕事がラジオしかなくなっていたなんて予想もしなかった。

「めちゃイケ」という場所はやっちゃんにとって特別。
だから番組が終わるまで休むこともせず、
一生懸命に期待される場所に立って期待される芸を披露してきた。
その「めちゃイケ」がなくなった時に、
これまでできなかったことをやろうとしたこと、
それは至極当然だと思う。
だけどそこにコロナ禍。
だけどやっちゃんはそのコロナ禍も利用して、
歯列矯正までやってしまった。
その間妹さんの家に居候したり、
本意ではない仮住まいに住んだり、
そういうこともずっとずっと聴いてきた。

来週からやっちゃんの声は毎週聴けなくなった。
時折リモートで参加することは決まっているけれど、
「週刊やっちゃん」は不定期になった。

正直言って寂しいし、
安定のやっちゃん(精神的には不安定だが)の仕事が聴けなくなるのは、
本当の意味でつらい。
サラリーマンをやっていて、
昔から一番きついのが木曜日だから。
金曜日を迎えると「明日は休み」という気持ちとともに、
何となく山を一つ乗り越えた気分で楽になっている。
だから一番きつい木曜日のやっちゃんは癒しでもあり、
他のパートナーがあらわにしない感情の動きを感じ、
なんとなくホッとできる時間だった。

もしかしたら帰ってこないかもしれない。
もしかしたらすぐに帰ってくるかもしれない。
それはもはや全くわからない。
でも自分も通ってきた道だからわかる。
そして何もできなかったからわかる。
50歳だからこそできることがある。
50歳だからこそやった方が良いことがある。
だからこの本に素直に綴られたやっちゃんの日常を、
これからどう変化するかわからない日常を応援する。
明日はどうなるかわからない今の世の中だから、
できることをできるようにやりたいだけやればいい。

不定期ながら声が聴けるし、
その時にやっちゃんがどんな変化をするのか、
そんな楽しみができたと考えることにする。
エキセントリックで折れやすそうなやっちゃんだけど、
どんなにしなってもおれない人だと思うから、
次のステージのやっちゃんに出会いたいと思う。

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「偉い人ほどすぐ逃げる」 [電子書籍]


偉い人ほどすぐ逃げる (文春e-book)

偉い人ほどすぐ逃げる (文春e-book)

  • 作者: 武田 砂鉄
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/05/27
  • メディア: Kindle版


「このまま忘れてもらおう」作戦に惑わされない。
偉い人が嘘をついて真っ先に逃げ出し、監視しあう空気と共に「逆らうのは良くないよね」ムードが社会に蔓延。「それどころではない」のに五輪中止が即断されず、言葉の劣化はますます加速。身内に甘いメディア、届かないアベノマスクを待ち続ける私……これでいいのか?
このところ、俺は偉いんだぞ、と叫びながらこっちに向かってくるのではなく、そう叫びながら逃げていく姿ばかりが目に入る。そんな社会を活写したところ、こんな一冊に仕上がった。(「あとがき」より)
第1章 偉い人が逃げる ―忘れてもらうための政治
第2章 人間が潰される ―やったもん勝ち社会
第3章 五輪を止める ―優先され続けた祭典
第4章 劣化する言葉 ー「分断」に逃げる前に
第5章 メディアの無責任 ―まだ偉いと思っている

発売早々購入するつもりが、
諸般の事情(概ね金である)から買いそびれ、
「まだ在庫あるし」と思っていたら重版はかかるし、
一時的に在庫はなるなるし。
本当は砂鉄さんの本は紙の本で遺したいのに、
なぜかいつも電子書籍になってしまう。
著者にとってはありがたくはないのだろうけど。

砂鉄さんの出演するラジオ版組を聴いていると、
この本に出てくる話は当たり前のように頭に残っている。
そしてそれぞれに対して、
グイグイと筆をのめり込ませるように、
しつこく粘り強く突っ込んでいく文章は、
「世間が忘れても俺は忘れないぞ。 
 軽くいなして逃げたつもりでも、
 どこまでもその後ろ髪や尻尾をつかんで、 
 引きずられても付いていくからな。」
そんな覚悟と執念が感じられる。

もちろんこの8年余り、
言いたいことは世間も砂鉄さんも山ほどあるわけで、
それに関することは多いし大きく問題を投げかける。
しかし個人的に私が気になって、
より一層時間をかけて読み込んだのは、
「新潮45」に関する小川榮太郎のくだりだ。
この胡散臭い言葉遣いをする、
正体が何ものかもわからぬ太鼓持ちを、
グイグイと必殺のツボを押すかのように文章で追い詰める。
本人が読んでいなければ追い詰めようもないのだが、
とにかくこっちが読んでいて心臓がきゅっとするほど、
いや、ドキドキしながらスカッとするほどに、
どこまでも追及の手を緩めない砂鉄さん、
ハッキリ言って更に惚れましたぜw。

今はとにかくオリンピック開催。
それに付随するJOC、行政の不手際、
その追及の手と言論を緩めない砂鉄さん。
だって当たり前のことだ。
いつの間にから「開催」は既知の前提として成立してしまい、
有観客無観客、アルコールのあるなし、
話の焦点はどんどん移り変わり、
そこに国民は不在だし、
まるでCOVID-19もなきがごとし。
そりゃ「誰が逃がすか」とこっちも必死になる。
そして一緒に走ってくれるというか、
率先して旗を振ってくれる砂鉄さん(と伊集院さん)。

「忘れないぞ。今までのこともこれからのことも。 
 ちょっと目を離すとすぐに問題をすり替えるし、 
 あっと言う間に逃げていくからな。」

もはやこれは国民の合い言葉にすべしである。
そして物事は簡単に忘れてはいけないし、
なかったことにしても行けないのである。
「お腹が痛い」と去って行ったあの人が、
またも「第三次」(大惨事の間違いじゃなかろうか)に向けて動いているって?
二度も投げ出したボンボンに誰が預託する?
だから忘れるな。
「偉い人ほどすぐ逃げる」のだから、
信用する相手は簡単に決めずによーく見極めよう。
過去の反省を踏まえて。

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「あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた」 [電子書籍]


あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた

あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた

  • 作者: ブルボン小林
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: Kindle版


赤江珠緒『羆嵐』芦田愛菜『ABC殺人事件』安倍晋三『海賊とよばれた男』阿部寛『巨大隕石が地球に衝突する日』有村架純『悪夢の観覧車』安藤サクラ『花鳥風月の科学』石田ゆり子 『なまけ者のさとり方』稲垣吾郎『うたかたの日々』上野樹里『青空のむこう』宇垣美里『春の雪』宇多田ヒカル『荒野のおおかみ』有働由美子『父の詫び状』大坂なおみ『OPEN』大谷翔『チーズはどこへ消えた?』
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大体において「有名人の愛読書」なんてものは、
その時のイメージに合わせて語られるもの。
そういう風な解釈をしている。
俳優ならドラマや映画の番宣に合わせて、
政治家や実業家ならその時の立場や状況に合わせて、
それ以外の人は自分のイメージに合わせて。

そう思っていたから本書の愛読書を確認して、
「意外とガチだな」と思った次第。
まぁ「合わせて」いる人もいることはいるのだけど、
筆者が拾ってきたその愛読書のタイミングが絶妙なのか、
案外その人の本当の愛読書っぽいのだ。
いや、本当にそうかは本人のみぞ知るなんだけど。

で、透けて見えるのが「恋愛」と「趣味」。
世間を敵に回す気はないので明言しないが、
「この人、良い恋愛していないんだろうな」と感じる愛読書ちらほら。
「この人、本当は今の自分と違う趣味で開放したいんだろうな」と思われる愛読書ちらほら。
もちろん「ああ、いかにもこの人らしい」という本もあるのだが、
意外性とともにそういう部分がちょっと見えると、
意地の悪い私はにんまりしてしまう。
「取り繕ったつもりでも、かっこつけたつもりでも隠せない」
そんなものが愛読書という存在にはあると思う。
「海賊と呼ばれた男」を愛読書に挙げた人は、
主人公のように店員を家族として愛するなんてこともなく、
自分の嘘と勝手な都合で官僚が死んでも嘘をつき続け、
しまいには「お腹が痛い」と言ってリタイアする。
いや、自分に利益をもたらすお友達は税金を使って便宜を図るほど愛しているのか。
でもそこには田岡のような厳しさと包み込むような大きさは感じられない。
子供の遊び友達の延長でしかない。
田岡にあこがれてはいるのだろうが、
どう考えても曲解しているし自分の「ごっこ遊び」になっている。
もっとも著者が著者だからお友達として取り上げたのだろうけど。
「豊臣秀吉」を挙げた男は老醜をさらした秀吉よろしく、
今やしどろもどろの答弁を繰り広げ、
これまた利権と中抜きに終始しながら政治ごっこを続けている。
草履とりだったころから出世するまではよかったのだろうが、
いざ頂点に上り詰めてみるとその器ではなく、
やったことはと言えば自分の子供可愛さに・・・
あ、そういうことかw。

ということで、
なかなかに本質を突いた愛読書の数々、
著者の優しい視線と相まって楽しい本である。
私は思わず絶版ながら「スノードーム」という本を買ってしまった。
絶版になっている本も多いのだが、
「読みたい」と思わせてくれる著者の読み解きもまた魅力。

それにしても赤江さん、
あなたは本当に一貫した趣味で素敵だよw。
リスナーならだれでも知っていた愛読書だけど、
そこに「漂流」も当然並んでいるw。

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