「愛しのタチアナ」 [Amazon Prime Video]
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督が、二人の中年男と二人の外国人女性の奇妙な旅を描くロードムービー。60年代のフィンランド。コーヒー中毒の仕立て屋ヴァルトは、いい年をしてロックンローラー気取りの修理工レイノと一緒に、車であてのない旅に出る。途中立ち寄ったバーでエストニア人のクラウディアとロシア人のタチアナに出会い、ヴァルトたちは二人を港まで送ることにする。
遊びはあるのに無駄はない。
たった1時間2分の映画の中に、
母親とふたり暮らしで苛ついて息詰まった男と、
その男の車の修理をした格好をつけたい男。
この二人が不意にその車で旅立ち、
道すがら乗せたエストニアとロシアに帰る二人の女性。
4人のロードムービーは、
煮え切らない二人の男と、
余計なことは言わないが優しく包容力にあふれた女性と、
静かに静かに感情を動かしていく。
主人公が使っているミシンに、
「ハスクバーナ」と書いてあって、
「あれ?」なんで知っているんだろうと。
で、思い出した。
昔営業でバイク屋周りをしていたときに、
ハスクバーナのオートバイを見ていたからだ。
で、ちょっと調べてみたら、
BMWが買った挙げ句に、
オースゴリアの企業に売却されていた。
BMW、ハスクバーナをオーストリア企業に売却へ
ローバーの時と同じように、
自前のブランドが持たない技術とネームバリューを買って、
要らなくなったらサッサと売る。
私はBMWのこのやり方が気に入らないので、
絶対にBMWを許さない。
買えないからどうでも良いけれど、
バイエルン発動機は大キライである。
全く映画と関係ないことだが、
1995年の映画を見て、
そんなことを思い出すこと自体、
それもまた映画の楽しみだなぁと思う。
カウリスマキの作品は哀しい労働者が多いが、
この映画では決して哀しいとは思わない。
中年以降老いらくの恋、
それにかけようとする気持ちも、
家に帰って母親と日常を繰り返す気持ちも、
どちらも平穏のうちに終わっていると思う。
人生って実はこんなモノだし、
逆にエストニアに残ると決心した男もまた、
日常の中の決心でありながら、
人生を変える決心であり、
それはある意味人生の平穏を求めているのかもしれない。
たった1時間2分。
天才だなーと思う。
2024-04-28 00:00
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