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「オッペンハイマー」 [映画]




本物のオッペンハイマー

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  • 発売日: 2023/08/30
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オッペンハイマー 上 異才 (ハヤカワ文庫NF)

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  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2024/01/22
  • メディア: Kindle版



オッペンハイマー 中 原爆 (ハヤカワ文庫NF)

オッペンハイマー 中 原爆 (ハヤカワ文庫NF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2024/01/22
  • メディア: Kindle版



オッペンハイマー 下 贖罪 (ハヤカワ文庫NF)

オッペンハイマー 下 贖罪 (ハヤカワ文庫NF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2024/01/22
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マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪

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  • 発売日: 2024/02/21
  • メディア: Prime Video




Oppenheimer [Blu-ray] [2023] [Region Free]

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  • メディア: Blu-ray



半年以上待たされて、
その間にアメリカではメディアも発売されて、
一時は買おうかと思ったけれど、
日本語字幕がないから諦めて、
原作となった本は絶版。
フリマでオークションで高値。
やっと復刊したと思ったが、
上巻の途中までしか読めず、
見られたのはAmazon Prime Videoと「映像の世紀バタフライエフェクト」。
オッペンハイマーという人を理解するため、
準備が必要だったのは、
日本人にとっては「原爆の父」とも言われる人の、
人間的側面の情報に触れる機会は少なく、
自分が何も知らない状態だったから。

「オッペンハイマー」(原題:アメリカン・プロメテウス)の上巻、
燃焼時から学生時代までを読んで、
この知識を入れておくことは大きいと思った。
後に「学者バカ」とか「世間知らず」のように言われる人にありがちな、
純粋に学問をすることが好きで、
だけど人間としては性格も手先も不器用で、
それが故にのめり込んだら抜け出せない、
何処か人間として情動的に問題のある人、
そういう人であると言うことを知っていおいたのは、
映画を見る上に置いてとても重要なベースになった。

結論から言ってしまえば、
おっペンハイバーという人は非常に複雑で、
内的にも外的にも矛盾を多々抱えていて、
決して倫理的な人でもなければ、
必ずしも良き夫でも良き父親でもなく、
良き科学者でもなかったことは確か。
彼は本当に「理論物理学者」であり、
自分は傑出した手腕があったわけではないけれど、
多くの専門家の知識と手腕をまとめ上げる能力、
そういう意味での洞察や管理能力に優れていた人。
そしてその能力を最大限群と政府に利用された人。
そう言うことなのだ。
そしてその人間としての欠損故に、
敵を作って過去をほじくり出されて、
彼が原爆使用の後にした発言を取り上げられ、
結果的に彼は追い込まれたのだ、

原爆を作ろうとした動機は「ナチスを壊滅させるため」。
ユダヤ人だった彼にとって、
アウシュビッツで行われていることを思えば、
それは決して無理もないことだった。
あの当時はアメリカ、ドイツ、日本が、
原爆をどこが一番先に作るのかを競っていた。
もちろん作る=使用するなのだが、
しかし結果的にほぼ完成に近づいたところで、
ナチスは降伏してドイツとの戦争は終わる。
軍としては20億ドルをかけたこのプロジェクト、
その成果を何処かで見せることが必要。
そこで見つけた目的が、
「戦争を終わらせることで犠牲者も減らせる」という大義名分で、
日本に原爆投下をすることだった。

徹頭徹尾、
あくまでも理論物理学者だったオッペンハイマーは、
「ナチスを滅ぼす」という大義名分の元に利用され、
余りにも純粋で何かが欠損していた彼は、
それが大量破壊兵器になることも承知、
理論上計算上では、
もしかしたら世界が滅びることにナルコとも勝利、
それでもやらなきゃいられなくなってしまう。
そして広島長崎の営巣、レポートを見せられたとき、
彼は正視することを拒否している。
日本に来たときのコメントでは、
「原爆投下を後悔はしていない」と言ったが、
彼は科学者としては決して後悔していないだろうが、
人間としては違ったのではないだろうか。
学者としては作ったら試したくなる。
だから日本への原爆投下に反対の署名は拒否した。
でも実際にその被害を目の当たりにすることさえできない。
彼は単なる学者。
優秀であるが故に軍に利用された学者。

おそらく広島長崎の人には、
私の主観は受け入れられないだろう。
どんなことがあってもあんなにも残虐な大量殺戮兵器を作った、
そのことの罪は免れないと考えられて当然だ。
何しろ彼は「アメリカン・プロメテウス」なのだから。
彼自身が感じた血塗られた手は決してキレイにはならない。
その感情は理解できる。
だからそのことは否定しないし受け入れる。
だけどこのことはいくら議論しても不毛だ。
彼は作ってしまったし、
軍と政府は投下してしまった。
その事実は変えられないのだから。

さて、映画本体。
いやはや、ノーランには恐れ入った。
こんなにも濃密な人間ドラマを、
彼が脚色して撮影できるとは思っていなかった。
最初1時間は多少かったるい。
説明は細かくはしないが、
オッペンハイマーの学者としてどういう人か、
人間として男としてどういう人間か、
そういうものが描かれているので、
多少なりとも退屈な時間ではある。
ただし私は本で彼のそれ以前を読んでいたので、
ものすごく納得したし、
彼の欠損した部分についての描写に、
「これが後の伏線になる」と思えた。
そこからは怒濤の展開。
彼が陰謀によって追い詰められて行く様子、
追い詰める方が得意げに語る様子、
その緊迫と一瞬も聞き逃せない台詞が続く。
きっかけは些細なことだったけれど、
コンプレックスの塊だったストローズが、
何気ないエリートで裕福なオッペンハイマーの発した言葉から、
こんな事態にまで発展するなんて、
オッペンハイマーには想像もつかなかっただろう。

俳優の人数が多すぎて、
いちいち褒めていたらきりがない。
なので少しだけ。
エミリー・ブラント演じる妻は、
最初から複雑な関係からスタートして、
いつも肝心な所では肝っ玉の据わったおっかさん。
オッペンハイマーにとっては妻と言うより母親だ。
その凄味足るや、
クライマックスの目線一つで人を射殺しそうだった。
そしてトム・コンティ演じるアインシュタイン。
彼は原爆の製造を大統領に助言した。
しかし彼はその罪も自分の中で引き受けていた。
あのお茶目な表情で知られたアインシュタインを、
実に辛気くさく、しかし懐が深い人とiして、
しっかりと演じていたのが感動的。
「水爆の父」となるテラーを演じたベニー・サフディ、
これがまた独特の存在感で、
複雑な思いを抱えて対立しながら、
水爆に反対するオッペンハイマーへの反感を静かに爆発させる。
アカデミー賞受賞俳優はもう当然だから割愛する。
もう本当にちょい役だけど重要ならラミ・マレック、
彼の科学者らしい冷静で理路整然とした口調の素晴らしさ、
ジョシュ・ハートネットの落ち着いた大人としての口調、
不安定で魅力的な女性を体現するフローレンス・ピュー、
書き出したらきりがない。
個人的には最高の演技で最高過ぎた、
ケネス・ブラナー演じるボーア。
あの説得力と人間としての存在感は傑出していた。
オッペンハイマーに影響を与える人物として、
彼は見事なまでに彼の心を決めさせるのと同時に、
大きくかき乱す役割を果たす。

今回私は敢えてシネマスコープで観た。
最初の1回目はこれでちゃんと理解したかった。
そしてラッキーだったことに、
これが特別な音響であるSAIONのスクリーンで、
唯一上映される時間帯が当たった。
これが最高だった。
スクリーンは無理なく全視野に映像も字幕も入る、
そして迫力の音響効果。
実際にシートがフルエルほどの音響なのだ。
そしてこのあとIMAX上映に挑む。
我ながらなかなかいい選択だったと思う。

画面がカラーからモノクロに切り替わるし、
時系列はバラバラだし、
いろいろと錯綜しながら映画はすすむ。
だから一度で理解するのは難しいかもしれない。
でもそれならば何度でも観れば良い。
なんででも観て楽しむ価値がある。
そういう映画だ。
そしてこれは原爆製造と原爆投下を正当化した映画ではない。
むしろ製造したことによって死の神となり、
投下したことで破壊の神となった男、
その男の複雑に引き裂かれる心と人生、
そしてその彼に人生を狂わされた人たちの物語。
でも実際に彼は軍に利用された学者だ。



余談。
映画終了後20代半ばくらいのカップルの会話。
彼女:「すごかったん」
彼氏:「え、でも3時間まではいらないよ:

貴方がどう思うか、
劇場で是非ご覧ください。

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