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「異人たち」 [映画]



【ストーリー】
ロンドンのタワーマンションで暮らすアダムは、12歳の時に交通事故で両親を亡くした40代の脚本家。それ以来、孤独な人生を歩んできた彼は、在りし日の両親の思い出に基づく脚本に取り組んでいる。そして幼少期を過ごした郊外の家を訪ねると、そこには30年前に他界した父と母が当時のままの姿で住んでいた。その後、アダムは足繁く実家に通って心満たされるひとときに浸る一方、同じマンションの住人である謎めいた青年ハリーと恋に落ちていく。しかし、その夢のような愛おしい日々は永遠には続かなかった……。

多分日本では評価は分かれるだろう、
それは設定の変更から予想できた。
原作は読んでいないが、
もともとの「異人たちとの夏」に存在した違和感、
不自然さのようなものは健在。
主人公がゲイであること。
それが物議を醸すだろうことはわかる。
しかしそれが「異人たちとの夏」には存在しなかった、
世代と時代を超えた親子のちょっとした断絶を招く。
母親は動揺して受け入れられず、
当時「不治の病」とされたものはどうなったのか?
そのことを心配する。
当然だ。
1980年代にAIDSは死の病だった。
それもゲイの人間たちを中心に感染するため、
宗教的、社会的、道徳的に同性愛を受け入れがたい人たちには、
格好の攻撃材料となった。
2階にあがって幼少時の部屋に入ると、
すでに彼がゲイだったことがわかる。
GIジョーの人形、FGTHのポスター、様々な小物が、
彼の内面を表している。
その部屋に父親は入ろうとしなかった。
主人公はその理由を尋ねる。
この物語は12歳前に死んだ両親と、
本当の自分をわかってもらうための、
理解し合うための対話の時間を取り戻す物語。
そこが元の作品とは決定的に違う。
そして両親と会うようになったなお、
満たされぬ孤独と寂しさを共有し埋め会う存在、
心を開く存在を見つける物語。
最後は訳もわからず涙を流していた。

孤独、
寂しさ、
満たされぬ思い、
時代は変わってもなお、
マイノリティであるという思い。
その切なさを満たせるのは、
無条件の無償の愛だけなのかも知れない。

アンドリュー・スコットという俳優、
今まで見ていたのに全く印象に残っていない。
今回「やけに瞳が大きい人だなぁ」と思って、
その瞳の様子がやけに気になった。
ポール・メスカルは安定の不安定さ。
見るものを不安にさせる不安定な脆い雰囲気。
美しく蠱惑的でありながら、
何かが一緒にいるものを不安にさせる。
ビックリしたのは、
オヤジ役がジェイミー・ベル!
あの「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル!
最初クレジットを見て、
「えーっと、知っている名前だけと誰だっけ?」
で思い出したときのショックw。
でも悪い人じゃないし、
息子のことも理解しようと努めている。

決して派手な作品ではないけれど、
これは意外な拾いものだと思う。
むしろ「異人たちとの夏」は知らなくてもいい。
これはこれで、
非常に現代的に脚色され、
1980年代のヒット曲を背景に、
当時のゲイカルチャーがどんなもので、
マジョリティが向ける視線や抱く認識がどうだったか、
それを繊細に克明に描き出している。

2024年に、
まさかフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドに泣かされるとは。

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「異人たちとの夏」 [Amazon Prime Video]




異人たちとの夏

異人たちとの夏

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2015/12/01
  • メディア: Prime Video


妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオライターは、故郷・浅草の街で幼い頃に死別した若い父母とそっくりな二人に出逢った。だが、美しい恋人・ケイは、二人にもう決して逢わないでくれと迫ってくる。渇ききった現代人の生活に、そっと忍び込んでくる孤独と幻想。お伽話といって笑えない不思議な時間と非現実な空間を描く。

町山さんの「異人たち」の紹介で、
俄然観る気になって、
それならこっちも先に観ておかないと、と。 
公開当時から「良い映画」と話題になっていたので、
もちろん認識はしていたけれど、
そう言われると観たくなくなる天の邪鬼w。
なんかもう最初から「お涙頂戴、感動作」って言われると、
「じゃ、良いか」って思ってしまう。

いやー、みんな若いw。
そしてあの当時の風間さんの仲間たちが一杯。 
昔の映画らしくオープニングで大凡のクレジットが出るので、
「本多猪四郎」「高橋幸宏」「ベンガル」「角替和枝」「笹野高史」「「石丸謙二郎」
その名前でわくわくしてしまった。
一番の存在感は本多猪四郎監督。
さすがの貫禄でございました。
で、実は山田太一原作と言うだけで、
他は全く真っ白の状態で見始めたもので、
監督が大林宣彦あることも、
脚本が市川森一であることも知らず。

参った。
クライマックスでいきなりああいう展開になるとは。
もう笑うしかなかった。
ただ両親と過ごす時間は本当に愛おしくて、
頑固な職人がよく似合う鶴太郎の演技と、
可愛くて妙に色っぽいお母ちゃんである秋吉久美子が素晴らしくて、
風間杜夫の内面が子どもに返るようで、
もはや親子として何の違和感も覚えない。
あの時間の愛おしさは胸に染みる。
だからこそ現実に戻ったときの虚しさ、
余計に愛を求める気持ちも理解できる。

でもなぁ。 
あの時代だからしょうがないんだけど、
最後の最後のあの演出はなぁ。 
あれが原作もそうなのだとしても、
映像化は何か他に方法がなかったかな。
でもあの時代のハリウッド映画とかも、
あんな感じの作品と、
二つの映画が合わさったようなのもあった気がする。



これが今回リメイクされた作品の予告。
なんの興味もなかったので観ていなかったけれど、
「ほう、そういう感じで設定を弄ってきたか」と思ったら、
もう観たくて仕方なくなった。
そしてポール・メスカルが出ているし、
こりゃ観ておかないと公開しそうだな、と。

後半を観ちゃうと別物かな、と思う。 
まぁいろいろあったみたいだし、
「期待していない分面白いと思われる」という利重剛のコメントに、
首が落ちるほど頷きたい。

せっかく名作になりかけたのに、
ああ残念。 
あのアパートの絵作りとか最高なのに。

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「ジュリアン」 [Amazon Prime Video]




ジュリアン(字幕版)

ジュリアン(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/11/13
  • メディア: Prime Video


両親が離婚し母と姉と暮らすことになった11歳の少年ジュリアン。離婚調整の取り決めで共同親権となり、隔週の週末ごとに別れた父アントワーヌと過ごすことに。母ミリアムは頑なに父アントワーヌに会おうとせず、電話番号も教えない。アントワーヌは共同親権を盾にジュリアンを通じて母の連絡先を突き止めようとする。ジュリアンは母を守るために必死で父に嘘をつき続けるが、アントワーヌの不満は溜まり続け、ある日ついに爆発する。

最悪の採決をしてしまった、
「共同親権」の恐ろしさ。

冒頭共同親権を争うシーン。
日本でもフランスでも変わらない。
いや、世界中で変わらないのだろう。
収入の過多が俎上に乗る。
父親は訴える。
「息子には父親が必要だ」
けれど息子の供述が読み上げられる。
「あの男が来るとコワイ。 
 あの男が母親を殴る。」

しかし次のシーンに映るのは、
息子を迎えに来た父親のならすクラクション。

なぜ人間というのは、
失うとなると執着心が強まるのだろう。
自分が投げ出したオモチャを、
他の子どもが遊び始めると欲しくなる。
いらないと思っていたのに、
いざ捨てるとなると、
誰かにもらわれるとなると惜しくなる。
そこに愛情などないのに。
愛情があると錯覚しているだけなのに。
そこにあるのは愛情ではなく、
ただの執着心なのに。

ある意味、
この映画では男がバカで、
衝動的に凶行を止められなくなり、
おそらくはこの先そのことが幸いとなる。
でもそこまでの時間、
妻や子供たちは恐怖の時間を過ごす。
あの男が呼ぶ「ジュリアン」という名前、
母親が呼ぶ「ジュリアン」という名前、
その意味はおそらく全く違う意味だと思った。
あの男にとって「ジュリアン」は妻を繋ぎ止める道具、
妻の今を知るための情報員、
息子として呼んでいる様子も可愛がっている様子もない。

そう、この男はバカで良かった。
でももっと陰湿で狡猾な男もいる。
もちろん男女逆のパターンもある。
狡猾に証拠を残さないように、
相手を追い詰めていくことだってできる。
暴力を用いなくても相手にダメージを与えることはできる。
その方が悪質だしダメージも大きい。
そうして相手が弱ったところで頽れるところを待ち構える。

日本も共同親権を採択した。
これによってこの映画のように、
子どもと接見することで、
現在の住所や職場などがばれることもある。
円満に別れた二人ならともかく、
様々な事情で知られてはならない情報を抱えることが多い。
だからこそ共同親権を簡単に許すことは危険。



宗主国がそうだからと言って、
この国までもが、
なぜ100年前に帰ろうとするのか?
確実にこの国は、
明治の法律と権力を目指している。
やがて結婚した女は無能力者となるのだ。
そう思いながら毎日「虎に翼」を見て、
「はて?」と首をかしげながら、
はらわたが煮えくり返る思いを抱えている。

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「荒野の用心棒」 [ムービープラス]




荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: Blu-ray



セルジオ・レオーネが、
黒澤明の許可など一切なく「用心棒」をリメイク。
多くの主演俳優役に断られた挙げ句、
クリント・イーストウッドに回ってきたとき、
彼はシナリオを読み始めて程なく、
これが「用心棒」のリメイクであることに気付いたという。
黒澤明の「用心棒」をイーストウッドがその時に知っていたのも驚き。
そしてこの映画が大ヒットしたが故に、
黒澤の知るところとなり、
結果的に公開の権利を持った。
だからこその「荒野の用心棒」という邦題なのだろう。

元のシナリオがしっかりしている上に、
とんでもない思い切りの良さ、
黒澤にはない撮影の仕方や特徴、
そこにモリコーネの音楽。
そりゃまぁヒットしない方が不思議だ。

で、最後にこれを観て思った。
「賞金稼ぎに飽きたのか、
 それとも賞金稼ぎより割が良かったのか、 
 名前を変えて用心棒になるというのもあり。」
なるほど、これで逆三部作の構成に納得。
わずかだがイーストウッドが若いし、
ちょっと硬い雰囲気なのはご愛敬。
ヒッコリーのシャツに家側のベストにポンチョ。
最終形がそこにあった。

果たしてセルジオ・レオーネがそこを意識したのか、
それは全くわからないのだけど、
まぁ彼ならそのくらいのことは考えるだろう。
しかし後年この作品をモリコーネと二人で観て、
「ひどいものだ」と二人で笑い合ったというのだから、
それなりに手をかけ時間をかけていたが、
後年の彼らの価値観からは「ひどいもの」だったのだろう。
まぁ存外この手の映画は娯楽映画であり、
いろいろと小難しいことを言う評論家には評価されないし、
所詮安価な予算で粗製乱造したと言った方が良い、
スパゲッティ・ウェスタンの一つなのだから、
彼らの仕事にとってはその程度の認識なのかも知れない。

逆に言えば、
難しいことなど考えず、
ただ面白いものを撮りたくて、
ただ安く音楽を作らなきゃならなくて、
いろいろ工夫した結果が結実することもある。
その精神が開拓する時代もあると言うことだ。

そういう意味では天晴れ。
同級生コンビに万歳。

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「優作について私が知っている二、三の事柄」 [WOWOW]




●優作について私が知っている二、三の事柄
【解説】
CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOWの開催から29年。あれから長い年月が過ぎたが、松田優作の人気はいまだ衰えず、傑出した俳優として、今や伝説の域に達している。しかし、伝説化されるにつれ、彼の実像はおぼろになってゆく。
そこで、本ドキュメンタリーでは、水谷豊、桃井かおりをはじめ、CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOWを表で、陰で支えた者たちに新規にインタビューを敢行。松田優作の盟友・崔洋一の導きによって、生の言葉がつむぎ出され、素顔の松田の膨大な証言が寄せられた。けれど、インタビューを重ねるほどに、松田優作は一筋縄ではいかない様々な「顔」を見せ始める。いったい彼は「狂気をはらんだ男」なのか「求道者」なのか「一緒にいる時はいつも笑っていた人」なのか……
松田優作のスチール写真や、松田本人の歌唱も多数収録! 松田優作という存在自体に鋭く迫る、渾身のドキュメンタリー、堂々完成!
【出演者】
水谷豊 桃井かおり 原田喧太 高垣健 渡邉俊夫 奈良敏博 崔洋一(インタビュアー)

ファンなら誰でも持っているのかもしれないが、
熱狂的なファンではなかったし、
その凄さはわかっていても、
なかなか近寄りがたいというか、
その張り詰めたような存在そのものが怖かった。
今回生誕75周年ということで、
WOWOWで特集放送があって、
この1本にたどり着いた。
で、実はちょっとマイルド風味の、
息子松田龍平は大好きな俳優だったりする。

とにかく水谷豊さんの話が刺さった。
二人にしかわからない、
理解し得ない世界。
そんな関係が伝わってきて震えた。
残念ながらこのインタビューの時には、
原田芳雄さんは故人だったが、
息子さんが微に入り細に入り、
覚えていることを語ってくれる。
そして彼らを繋ぐ存在として、
桃井かおりさんがまた微妙な空気やココロモチを語る。
そのオトナの関係が心地良くて、
ちょっと子どもっぽい男どもを見守る、
桃井さんの視線の優しさを感じられてとても良い気分。

そんな素顔を語られると、
少し松田優作に距離が縮まった気がした。

私はまさしく世代がどんぴしゃり。
デビューから早逝するまで、
同時代を生きたし観てきた。
彼が自分の命よりも、
オーディションで得た「ブラック・レイン」への出演を優先したこと、
そのことも充分知っていた。
だから冒頭で桃井さんが、
「優作が死んだって言ったら自殺だと思うじゃない?」
頷きながらもそうでない現実も知っている。

ただその佇まいを単純に好きと言えれば、
その方がどれだけ楽か。
歌詞の話などを聞いていて、
彼のバックグラウンドを考えると、
ちょっと複雑な思いも抱いたりもする。

そうやって少しずつ、
ステンドグラスやパッチワークのように、
松田優作の顔の一部をつなぎ合わせる。

生誕75周年にして、
私がやってみたいことになった。

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今週の切り花。 [お買い物]

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またもバラ。
でも早ければそろそろバラ園も咲き始めるから。
季節の花と言えば季節の花。

ちょっと余分にお金を出せば、
もっといろんな色もあるのだけれど、
まぁ懐事情でしょうがないし、
別に大きな花瓶で飾るわけでもなし。

やっと良い季節が安定してきて、
桜もそろそろ終わり。
陽光の中、
次は藤の花も咲くしこれからは花盛り。

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「実録 マリウポリの20日間」 [NHK-BS1]



第96回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞受賞
4月26日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか 全国緊急公開決定!
2022年2月、ロシアがウクライナ東部マリウポリへ侵攻開始。
戦火に晒された人々の惨状をAP通信取材班が命がけで撮影を敢行し、
決死の脱出劇の末、世界へと発信された奇跡の記録映像

こうした戦場のドキュメンタリーにはつきものだが、
こんなことが起こらなければ、
いくらすぐれたドキュメンタリーであっても、
この映画は成立しなかったし、
作られることもなかったのだ。
本来こんなドキュメンタリーが作られることは、
人類として恥ずかしいことなのである。

アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞を受けて、
NHK-BS1が再放送をしてくれた。
前後編に別れて、
ナレーションは吹き替えられているが、
それでも電波で観られることの価値は絶大である。
BSの世界のドキュメンタリーを見続けるのは、
こういう良質のドキュメンタリーを提供してくれるから。
何度でも言うが、
NHK受信料は、
彼らが作るか買うかに関わらず、
ドキュメンタリーの放送を観るだけで充分ペイすると思っている。

余りにも酷い。
確かに報道では知っていた。
医療機関、それも産科専門病院を狙い撃ちする。
臨月の妊産婦と胎児が死んでいく。
それはもう無残で観ていられない。
ロシアの戦車に刻まれた「Z」の文字。
これが現れる前は未来への希望に満ちあふれていたであろう、
妊産婦と家族たち死んでいくのだ。
助かってもうちひしがれて絶望の表情が写る。
その病院から別の総合病院に患者が運ばれるが、
彼らは外科的な負傷を負っていて、
その上で分娩に臨む。
病院側は産科がないから大変だ。

希望から絶望にたたき落とす攻撃。

なんという残酷で闘志を挫く攻撃。
 
これがゲームなら見事と言うしかない。
マリウポリの町が日々閑散として、
日々破壊されていく様は映画のよう作り物にさえ見える。
でもこれは現実だ。
最終的にマリウポリは廃墟となるのだが、
その様子を如実に映し出すカメラの残酷さ。
けれどマリウポリの市民も兵士も臨んだ。
「この映像を世界に公開してくれ。 
 これがロシアのやり方だということを伝えてくれ」
その声に押されて助けられて、
APの取材班は何とかマリウポリからの脱出に成功する。

この映像が公開されても、
ロシアは「フェイク映像だ。ウクライナの過激派がやっている」
そう言い張って譲らない。

APと言う通信社がフェイクを公開するはずもなく、
ロシアの言い分を誰も信じることはないだろう。
それでもプーチンも即金も譲らない。
そして「これは正義の戦争だ」と言い張る。



ウクライナとロシアの関係は根深い。
ロシアの支配下でウクライナがどんな陰惨な目に遭ってきたか。
ほんの一部しか知らないのかもしれないが、
だからこそウクライナは降伏しないのだと思っている。
彼らはロシアに組み入れられたら、
ほぼナワリヌイと同じ運命が待っていると思って良いだろう。
市民もどんな仕打ちが待ち受けているか。



でもウクライナ侵攻から2年以上経って、
日本人の関心もかなり薄れているだろう。
今はガザの方が関心が高いのかもしれない。
でもどちらも現在進行形だ。
あれもこれもそれも、
関心が薄くなっても現在進行形。
AP通信社は20日間だったけれど、
あの町陥落するまで兵士は粘り続けた。
これは作り物ではない。
フェイクでもない。
だから私たちは観ておく必要がある。
現実の戦争の痛みと哀しみを知っておく必要がある。
「戦争ができる国にする」
そういう時代だからこそ本当の戦争を観るべきだ。
「戦争をできない国」は恥ずかしくも何ともない。
戦争なんてしないにこしたことはない。
生身の人間が傷ついて血を流し、
その命の炎が消える瞬間を、
ボディバッグを埋めていく作業のつらさ苦しさ、
そういう現実を思い知るべきだ。

明日は我が身なのだから。 

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「においが眠るまで」 [映画]



あらすじ:
匂いに敏感な、ひのき(17)は、
亡くなった父が残した全国のミニシアターで観た映画の感想が書かれたノートを見つける。
ある映画館だけ場所がわからず、匂いのメモや、感想だけが書かれていた。
コーヒー豆の焙煎店を営んでいた父が残したコーヒー豆を配りながら、父の巡った映画館へと旅にでるひのき。
薄れていく父の匂いと、場所のわからない映画館を探しながら、ひのきは少し、大人になっていく。

ロケ地にあの映画館版の御成座と、
シネコヤが使われていると言うことで、
何よりもミニシアターファンとして観なくては!
と言うことで、
ストーリーも出演者も調べずに向かう。
最近このパターン多過ぎw。
でもそれだけシネコヤでかかる映画に信頼を置いている。

ひのきは父親を亡くして、
それを忘れたいがために片付けを進める母の違和感を覚える。
彼女はまだ忘れたくないのだ。
彼女の思い出は「におい」と強く結びついている。
だけどやがてその「におい」も薄れて、
記憶から消えてしまうのだ。

映画館にはそれぞれのにおいがある。
シネコン全盛の今、
どこのシネコンも同じじゃないか、
するのはポップコーンのにおいだよ、
そう言われてしまいそうだが、
まだ入場制限もなく、
コンクリートの床で冬は底冷えがして、
夏は涼しいと言うより寒くなりそうなくらい、
途中退場途中入場あり、
中で飯を食おうが酒を飲もうが、
自由で何の文句も言われなかった時代、
映画館の中は生活のにおいであふれていた。
おととしから去年初めにかけて、
シネコヤは改装をしたのだが、
改造前のシネコヤには懐かしい独特の香央理があった。
それはちょっとかび臭いようなちょっと甘いような、
不思議に心が落ち着く癒されるにおいだった。
改装後の今は多少薄くなったのだが、
それでもやはり独特のにおいをいつも感じている。

秋田の御成座は手書きの看板で有名。
今もまだ手書きの看板にこだわって、
その素晴らしさはSNSでいつも紹介されて、
更にはいつも可愛いウサギが紹介される。
もちろんと言ってはなんだが、
生憎私は行ったことがないので、
どんな館内なのか映像を楽しみにしていた。
期待通りだった。
残念ながらうさちゃんは登場しないが、
外からの眺めで存分に看板が映されて、
中の様子は昔懐かしい田舎の映画館。
一番後ろに手すりがある作りも、
決して人間工学に基づいていなさそうなシートも、
懐かしい限りでそれだけで心が躍る。
そこで繰り広げられるユルい地元の爺さんたちとの会話。
その会話と存在が妙にしっくりとくるひのき。
ここは映画館であり、
街の暇な爺さんたちの社交場でもある。

秋田から唐突に鵠沼海岸。
シネコヤの主人との話が始まる。
この主人はあくまでもシナリオ上の主人。
本当の店主である竹中翔子さんとは見た目と雰囲気が全然違う。
もしかしたらこの人が店主なら、
シネコヤは今のような雰囲気ではなかったかも。
映画関係の本やパンフレットであふれた1階の店内、
アンティーク家具のソファや椅子が置かれた、
2階の落ち着いた雰囲気のシアター。
今そこに座っている空間が、
目の前に映し出されている不思議。
思い出される1階の本のにおい。
夜更けにベランダでたべるシーフードヌードルの背徳感の香りまで、
何とも生々しいくらいに脳内で再生される。

そして次に行き着いた先は、
周りのあるものや特長しかわからない映画館。
でもその映画館も今はなく・・・。

父親のにおいを思い出せるうちに、
そのにおいを再現しようとするする。
そのにおいは父親の日常のにおい、
構成するのは父親が生きた世界のにおい。
夕方になると家々から流れてくる夕食の香り。
それもまた生活の世界のにおい。
ちなみに私が働く事務所は、
ベーカリーがすぐそばにあるので、
窓を開ける季節はパンを焼くにおいで満たされるのが日常。
おそらく他人からしたら、
私にも独特のにおいがあるのだろう。
昔は喫煙者だったのでそれが私のにおい。
今はもうタバコも酒も止めたけれど、
年齢なりの加齢臭とデブの汗臭いにおいだろうか?

ひのきがあの店を継ぐのかはわからない。
でもあの設備さえ残しておけば、
きっと彼女は何かにつけ豆を焙煎して、
美味しい珈琲を入れることができるだろう。
それはにおいに敏感で父親を深く愛していたひのきにとって、
当然のことに用に思える。
でもそれまであの店の香りは封印だ。
次にはひのきが新しいにおいを残すようになる。

たった91分の映画だが、
ものすごく密度が濃くて、
ものすごく満ち足りた気持ちになれる。
両方の映画館を知っている人なら、
なおさらその思いは強いだろう。
こういう形でミニシアターに人が興味を持ち、
足を向けてくれるようになったら嬉しい。

でも自分の席が取りにくくなるのはちょっと辛いw。


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むきえびとさぬきのめざめのリゾット。 [料理]

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さぬきのめざめが先週届いたので、
たっぷり使ってリゾット。

シャウエッセンとバターソテー。

美味い。
毎年思うけど美味い。
毎年毎年「やっぱり美味い」と思う。
この品種は香川県の宝だな。

そのままたべて良し、
料理しても味が濃いから負けない。

今年は「一度だけ」と決めて、
2Lを奢ったのでより一層満足度高し。

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「幸せの1ページ」 [WOWOW]



対人恐怖症の人気冒険小説家、アレクサンドラ(ジョディ・フォスター)は何年も自宅に引きこもって暮らしていた。彼女は新しい小説のネタをネット検索していて、孤島で暮らす海洋生物学者(ジェラルド・バトラー)の記事に目をとめる。彼に協力を求めるつもりが、ある日彼の娘のニム(アビゲイル・ブレスリン)からSOSのメールが届き……。

先日中古DVDをあさっているときに、
何かジョディ・フォスターで知らない作品はないか、
検索したときに発見。
レンタル落ちを購入したのだが、
その後WOWOWオンデマンドにあるのを発見した。
それにしても全然知らない映画だし、
どんなものかと思ったけれど、
やっぱりジョディ・フォスターが作品を選ぶ眼は間違いない。

シリアスな作品が多い彼女だけど、
本作ではコメディエンヌぶりを遺憾なく発揮、
最近ではアメリカを救う男として有名な、
ジェラルド・バトラーは意外に知的かつ逞しい学者を演じ、
これがまたなかなかの好演。
そして「リトル・ミス・サンシャイン」で有名なアビゲイル・ブレスリンは、
いつもながらの芸達者ぶりで可愛くて健気。
そして何よりこれはとてもステキなファンタジーで、
親子が暮らす島も美しくて、
動物たちはニムと意思疎通できて、
それはそれは夢のような最高の映像。


幸せの1ページ / スペシャル・エディション [Blu-ray]

幸せの1ページ / スペシャル・エディション [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2009/02/13
  • メディア: Blu-ray



メディアはこんな状態なので、
配信を探せば各所で有料だけど観られる。
何よりラストからエンドロールで流れる、
U2の「Beautiful Day」を訊くともう幸せが最高潮に達する。
邦題は最低最悪だと思うが、
それに騙されずに是非一度。

本当にステキなファンタジーで、
最高の気分になれるから。

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- 人生は四十七から -